2008216日(土) 14:00-18:30
14:10-14:10 Opening remarks 坪田 一男

 

14:10-15:10 白内障
座 長 常岡  寛 東京慈恵会医科大学眼科学教室主任教授
 

極小切開白内障手術の流れ

常岡  寛
東京慈恵会医科大学眼科学教室主任教授

3mmの切開創で十分と思われていた白内障眼内レンズ手術ですが、最近その創口を小さくすることが可能になってきました。水晶体の摘出法には、灌流と吸引のポートを別にするBimanual micro phacoと、細い灌流スリーブを用いて従来と同じ手技で乳化吸引できるCoaxial micro phacoがあります。前者では1.4mmの創口から、後者では2.2mmの創口から水晶体を摘出できますが、最近では両者ともさらに創口を小さくする方法が開発されています。この術式にあわせて、小さな創口から挿入可能な眼内レンズが開発されました。今回の講演では、極小切開白内障手術の最前線をお伝えします。

Profile1976年東京慈恵会医科大学卒業。1981年医学博士の学位受領後、1985年国立相模原病院眼科医長、1990年東京慈恵会医科大学眼科学講座講師、1996年東京慈恵会医科大学眼科学講座助教授、2000年東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科診療部長を経て、2007年東京慈恵会医科大学眼科学講座主任教授就任。

 

白内障手術と患者QOL

大鹿 哲郎 
筑波大学大学院人間総合科学研究科(臨床医学系)
機能制御医学専攻眼科学分野眼科外科教授

眼科診療においては一般に、患者の視力や眼圧、視野といった“ものさし”で病気の程度を判定したり、手術や治療の効果を評価したりすることがほとんどであった。しかし、視力が上がっても患者のquality of life(QOL)は向上しなかったり、眼圧は下がっても逆にQOLが低下したりすることも、臨床上稀ではない。視覚に関連した患者のQOL(vision related QOL、VR-QOL)を評価し、病勢や治療を判定する“ものさし”にしようという考え方が、近年広がってきている。講演では、白内障手術と患者QOLについて、臨床的な観点からお話しさせていただく。

Profile1985年東京大学医学部卒業。1985年東京大学医学部眼科学教室、1988年東京厚生年金病院眼科、1995年東京大学医学部講師。1997年Louisiana State University Visiting Assistant Professor、1998年東京大学医学部助教授を経て2002年筑波大学臨床医学系教授就任。

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15:10-16:10 屈折矯正
座 長 ビッセン宮島弘子 東京歯科大学水道橋病院眼科教授
 

1. 屈折矯正 レーザーかIOLか?

ビッセン 宮島弘子
東京歯科大学水道橋病院眼科教授

屈折矯正は、エキシマレーザーを用いたLASIK(laser in situ keratomileusis)か、IOL(intraocular lens)としてphakic IOLやmultifocal IOLによる手術が主流である。適応は、技術進歩とともに、少しずつ変わっている。年齢、近視や遠視の程度、乱視の有無、老視矯正の有無、職業など、それぞれの症例に合った術式の選択肢がある。いろいろ考慮する項目が多くてわかりにくく思われがちな屈折矯正だが、実際の眼科診療の中で判断できるようになることを目標として、わかりやすく説明したい。

Profile1981年慶應義塾大学医学部卒業、1981年慶應義塾大学医学部眼科学教室入局。1984年 ドイツ ボン大学眼科助手、1987年 慶應義塾大学医学部眼科学教室助手。1989年国立埼玉病院眼科医長。1995年東京歯科大学市川総合病院眼科講師、慶應義塾大学医学部眼科学教室非常勤講師。2000年東京歯科大学水道橋病院眼科助教授を経て、2003年東京歯科大学水道橋病院眼科教授就任。

 

2. 白内障手術における屈折矯正−Bioptics

根岸 一乃
慶應義塾大学医学部眼科学教室准教授

近年白内障手術の進歩に伴い、手術患者の要求も高くなっている。現状において患者の満足度向上のためには、矯正視力の向上ばかりでなく裸眼視力の維持・向上も重視すべきであり、この意味で、最近では白内障手術後の正確な屈折矯正は重要性を増している。さらに、すでに海外や日本の治験において良好な成績が報告されている新世代の多焦点眼内レンズが2007年に日本でも一部認可されたが、多焦点眼内レンズの本来の目標である眼鏡装用率の低下を実現するためには、白内障術後の残余屈折異常の矯正が重要であることはいうまでもない。本講演では、白内障手術における屈折矯正、とくにエキシマレーザー屈折矯正手術とのBiopticsを中心に、自験例のデータを交えて検討する。

Profile1988年慶應義塾大学医学部卒業・同眼科学教室入局。1991年国立東京第二病院眼科、1995年国立埼玉病院眼科医長。1998年東京電力病院眼科科長、学位取得。1999年慶應義塾大学眼科講師(兼任)、2001年慶應義塾大学眼科専任講師を経て2007年慶應義塾大学眼科准教授就任。

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16:10-16:30 Refreshment Break
 
16:30-17:30 特別講演1 緑内障
座 長 常岡  寛 東京慈恵会医科大学眼科学教室主任教授
 

緑内障診療の進め方

白土 城照
四谷しらと眼科院長

緑内障診断に於ける視神経・視野所見の判読、ならびに治療における眼圧管理の重要性は言うまでもなく、先ごろ改定されたわが国の緑内障診療ガイドラインでも緑内障性視神経障害の判定基準が明文化され、単なる眼圧下降ではなく病期、危険因子に応じた目標眼圧設定の重要性が強調されている。しかし、実際の臨床では視神経障害の有無の判断が困難な例も多く、また多剤併用療法でも目標眼圧に達せず、且つ手術適応もためらわれる例や目標眼圧を達成しながらも視機能障害が進行する例など、ガイドラインの理想を実行しがたい例が数多く存在する。そしてその様な例に対する診療方針の決定、変更は個々の医師の裁量にゆだねられるが、全くの自由裁量ではなく総論としてのエビデンスとその限界を理解したうえでの経験に基づいて行われなけれぼならない。本講演では、その一助として演者の日常診療における緑内障診断の流れを紹介しながら、薬物治療、手術適応についての演者の考えを述べる。

Profile1975年東京慈恵会医科大学卒業、東京大学医学部眼科学教室入局、1983年東京大学医学部講師。1986年文部省長期在外研究員シェーファー緑内障財団並びにカリフォニア大学サンフランシスコ校留学。1994年東京大学医学部眼科学教室助教授就任。1998年東京医科大学助教授、八王子医療センター眼科部長を経て1999年東京医科大学教授。2004年四谷しらと眼科院長(白土緑内障研究所)東京医科大学客員教授、東京医科歯科大学局員教授。

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17:30-18:30 Anti-aging
座 長 坪田 一男 慶應義塾大学医学部眼科学教室
 

1. 眼から始めるアンチエイジング

坪田 一男
慶應義塾大学医学部眼科学教室教授

アンチエイジング医学では、加齢の影響を少しでも取り除いて疾病発症確率を減らすことが主たる目的のひとつである。現在エイジングの仮説として、活性酸素仮説と、カロリーリストリクション仮説の2つが有力な理論と注目されている。これらの理論に従って予防医学を展開することが着実なアンチエイジング医学へのステップと考えられるが、当然それは眼科領域でもあてはまることだ。老視、白内障、加齢黄斑変性、緑内障、網膜剥離、糖尿病性網膜症、ドライアイなど、実に80%以上の眼科疾患が加齢と関連する。アンチエイジング医学における最新の情報と、それらの眼科への応用と可能性をお話したい。

Profile1980年慶應義塾大学医学部卒業後、日米の医師免許を取得、85年米国ハーバード大学に留学、87年角膜クリニカルフェロー修了。99年、『The New England Journal of Medicine』の巻頭論文に「角膜上皮のステムセル移植術」が掲載され、世界に先駆けて体細胞ステムセル移植による治療を発表し注目を集める。ドライアイの研究においても高く評価され、各国で講演・指導にあたるほか、国内では、眼科専門医による安全な近視治療、アイバンクの活動にも精力的に取り組む。2001年より、研究と診療にアンチエイジング医学を導入し、その科学的な取り組みに注力。日本抗加齢医学会理事、「アンチエイジング医学」編集委員長を務める。

 

2. 内科領域からみた眼科への提言

久保  明
東海大学医学部教授、高輪メディカルクリニック院長

高輪メディカルクリニックでは、2001年に国内で初めてとなるアンチエイジングの診断システム「健康寿命ドック」を設立。生活習慣病や動脈硬化に関する地道なデータの蓄積と解析を行い、エイジングの診断と、ライフスタイルの介入について検討を重ね、東海大学医学部における「抗加齢ドック」の礎をきずいた。現在では、「遺伝子」「リスクマーカー」「画像」の3つの要素を組み合わせて、その人の生活習慣病リスクを把握し、個々のライフスタイルへの介入を行っている。このセッションでは、アンチエイジング医療の実際と最新の情報、そして眼科を専門とする先生方へ内科的なアプローチをご紹介し、ディスカッションを深めたい。

Profile1979年慶應大学医学部卒業、東京都済生会中央病院内科入局。1985年日本内科学会認定内科専門医。1988年医学博士号取得、米国ワシントン州立大学医学部動脈硬化部門留学。1989年日本糖尿病学会認定糖尿病専門医取得。1990年日本医師会認定健康スポーツ医、1991年東京都済生会中央病院内科副医長(〜1993年)、1992年日本内分泌学会認定内分泌専門医取得、杏林大学非常勤講師を経て1996年高輪メディカルクリニック設立院長就任。2000年日本予防医学協会学術担当理事、2002年日本抗加齢医学会理事。2005年 Anti-Aging Doctors株式会社 総合研究所 所長就任。2006年東海大学医学部教授就任、2006年新潟薬科大学客員教授就任。

 
19:00-21:00 情報交換会
 
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