Section 1 白内障
座 長 常岡 寛
東京慈恵会医科大学眼科学教室 主任教授
2020年の多焦点眼内レンズ予想
ビッセン宮島弘子
東京歯科大学水道橋病院眼科 教授
Profile◆1981年慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学医学部眼科学教室入局。84年ドイツ ボン大学眼科助手。87年慶應義塾大学医学部眼科学教室助手。89年国立埼玉病院眼科医長、95年東京歯科大学市川総合病院眼科講師、慶應義塾大学医学部眼科学教室非常勤講師。2000年東京歯科大学水道橋病院眼科助教授、03年東京歯科大学水道橋病院眼科教授、現在に至る。
2007年に現在使用されている多焦点眼内レンズの基本となるレンズが承認され、その後、着色、非球面、近方加入度の少ないタイプが登場した。さらにトーリック機能が加わり、眼内レンズの方はバリエーションがほぼ揃った感じである。タイトルは2020年と、きりのいい年号にしたが、これから6年後は、これまでの6年が眼内レンズそのものの進化の時代とすれば、眼内レンズ挿入術の進化の時代になると予想される。高機能眼内レンズをいかにうまく使いこなすかは、適切な度数およびモデル決定と理想的な位置に固定することが重要で、そのために顕微鏡と連動した術中生体測定、術前検査結果とのリンク、フェムトセカンドレーザーによる精密な切開、より安全な眼内レンズ挿入技術が可能になるであろう。皆さんと2020年にタイムスリップして多焦点眼内レンズの状況をのぞいてみたい。
白内障手術難症例対策
柴 琢也
東京慈恵会医科大学眼科学教室 講師
Profile◆1994年東京慈恵会医科大学卒業、国立病院機構東京医療センター。96年東京慈恵会医科大学眼科学講座。2001年国立病院機構相模原病院。02年国立パリ第6大学付属眼科病院 Quinze-Vingts留学(フランス)。07年東京慈恵会医科大学眼科学講座講師。
近年の白内障手術の進んできた方向は、水晶体摘出に関してはいかに安全に小さな切開創から水晶体を摘出するか、また眼内レンズ(IOL)に関してはいかに質の高い視機能を得られるIOLを小さな切開創から挿入するかについて検討されてきたといえる。現在では、超音波白内障手術(PEA)とfoldable IOLによる小切開白内障手術によって完成度の高い術式となっており、その結果、手術侵襲は眼・全身共に従来の方法に比べて格段に少なくなり、急速に手術の適応が拡大している。今までは良好な術後視機能が期待されないために最後まで手術の適応になり辛かった難症例に対しても同様であるが、決して手術が容易になったのではなく、様々な技術が進歩したことによる。従って適切な対策を行なわないで難症例に対しての手術に臨んでしまうと、時に重篤な合併症を来たしてしまう可能性がある。今回は、難症例に対する白内障手術を施行する際に必要な対策について検討する。 |