背景

第68回 日本聴覚医学会総会・学術講演会

会長挨拶

会長:鈴木 光也

第68回日本聴覚医学会学会総会・学術講演会
会長 鈴木 光也

 2023年(令和5年)10月11日(水)~13日(金)に千葉市海浜幕張の「幕張メッセ」において第68回日本聴覚医学会学会総会・学術講演会を担当させていただくことを大変光栄に存じます。本学会を東邦大学が担当させていただくのは、第43回大会(小田 恂会長1998年)以来であり25年振りとなります。このような機会を与えていただき、学会役員の先生をはじめ、代議員、会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 今学会の主題1は「難聴とフレイル、認知症」としました。高齢者の難聴は抑うつ,意欲低下(アパシー)をもたらし、フレイルや認知症の危険因子となるため、その対策は超高齢社会の我が国においては喫緊の課題です。フレイルや認知症患者における難聴の実態、耳鼻咽喉科の介入方法、聴覚補償の効果について議論したいと思います。主題2は「一側性感音難聴の現状・その問題点と対応」としました。一側性感音難聴は学業成績や心理的・社会的側面へ影響するといわれていますが、難聴の程度、随伴症状、発症時期、失聴期間、生活環境などにより対応も様々です。一側性感音難聴の現状、さらにその問題点と対応について多くの施設からの報告をお待ちしています。

 主題1,2についての問題点を掘り下げ理解を深めるために、シンポジウム1,2を企画しました。シンポジウム1では慶應大学名誉教授 小川 郁先生と名古屋大学教授 曽根 三千彦先生の司会により、耳鼻咽喉科学から愛知医科大学教授 内田 育恵先生と神戸市立医療センター中央市民病院総合聴覚センター長 内藤 泰先生、総合老年学からは東京大学教授 飯島 勝矢先生、そして社会衛生学から東邦大学准教授 道川 武紘先生にシンポジストをお願いしました。シンポジウム2では、医療法人医誠会イヤーセンター長 土井 勝美先生と杉内医院院長 杉内 智子先生の司会により、我が国の現状について東京大学准教授 樫尾明憲先生、補聴器装用効果について北里大学教授 佐野 肇先生、人工内耳の効果について国際医療福祉大学三田病院教授 岩崎 聡先生、そして療育について群馬パース大学言語聴覚学講師 岡野 由実先生にご講演いただきます。

 海外招待講演は、東京大学名誉教授 山岨 達也先生の司会により、Johns Hopkins 大学 の Frank R. Lin教授に “The relationship between hearing loss and either frailty or dementia”と題した講演を予定しています。

 今回は、主題に関するシンポジウムと海外招待講演のほかに、教育セミナー1、2とパネルディスカッションを企画しました。
教育セミナー1は、筑波大学副学長 原 晃先生の司会により、筑波大学教授 田渕 経司先生に「蝸牛障害・保護メカニズムに関する基礎的検討」ついてご講演いただきます。内耳性難聴の機序について理解を深めたい方、これから聴覚医学の研究を開始または指導される方、聴覚研究の幅をより広げたい方を主たる対象とした講義をお願いしました。
教育セミナー2は、京都民医連中央病院科長 佐藤 宏明先生の司会により、北里大学教授 佐野 肇先生に「純音聴力検査の実際 ―気導骨導差とマスキングを中心にー」の講演をお願いしました。純音聴力検査は難聴診療の基本であり、その後の診断・治療に大きく影響します。本セミナーでは若手医師、生理機能検査技師、言語聴覚士の方々を主たる対象として、純音聴力検査の実際、気導骨導差に評価、マスキング理論とマスキング困難例についてわかりやすく説明していただきます。

 パネルディスカッションは、「1枚のオージオグラムから何がわかるか ―難聴遺伝子研究の耳鼻咽喉科外来診療への還元― 」としました。司会は東京医科歯科大学名誉教授 小松崎 篤先生と信州大学名誉教授 宇佐美真一先生に、パネリストは国際医療福祉大学成田病院 教授 野口 佳裕先生、国際医療福祉大学三田病院准教授 高橋 優宏先生、北尻耳鼻咽喉科院長 北尻 真一郎先生にお願いしました。非症候群性感音難聴の中でも特に遅発性発症を中心に活発な討論を行っていただきます。

 ランチョンセミナー、スイーツセミナーでは難聴の診断・治療など聴覚医学に関するトピックスが取り上げられていますので、どうぞお楽しみください。また1日目の学術講演会終了後には補聴研究会、聴覚生理研究会、難聴遺伝子の研究会を2時間の予定で開催いたします。

 学会会場である幕張メッセ周辺には特に有名な観光スポットはありませんが、学会場は第1会場~第4会場、展示会場と休憩場所は十分に広いスペースを設定しましたので、様々な情報交換の場として有意義な時間を過ごしていただければ幸いです。5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類相当から5類に変わったため、コロナ禍以前のような学会開催を目指して準備しております。第68回日本聴覚医学会学会総会・学術講演会への皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。